2. ジャズらしい歌い方を習得する

ジャズ・ヴォーカルを魅力的に歌うためには、独特のリズム感や即興性を身につけることが重要です。
このセクションでは、ジャズらしい歌い方を習得するための具体的な練習方法を紹介します。

2-1. スウィング・フィールを身につける練習法

ジャズをジャズらしく聴かせる最大のポイントはスウィング感です。
スウィングとは、リズムの取り方を少し跳ねさせることで、ジャズ特有のグルーヴを生み出す奏法です。

例えば、以下のようなリズムの違いをイメージしてください。

① ストレート(まっすぐなリズム)
→ ♪ タタタタタタタタ

② スウィング(跳ねるリズム)
→ ♪ タッタ タッタ タッタ タッタ

ポップスやクラシックのようにストレートなリズムで歌うのではなく、**シンコペーション(裏拍を強調)**することで、ジャズ特有のノリが生まれます。

スウィング感を身につける練習法

  1. ジャズの名曲をよく聴く
     - エラ・フィッツジェラルド、サラ・ヴォーンなどの名曲を何度も聴いて、スウィングのノリを体に染み込ませる。
     - “All of Me” や “Cheek to Cheek” など、リズムが分かりやすい曲から始めると良い。

  2. スウィングで歌う練習
     - メトロノームを2拍目と4拍目に合わせてリズムを取る(通常の1, 3拍目ではなく)。
     - ゆっくりしたテンポで「タッタ タッタ」とリズムを意識しながら歌ってみる。

  3. 裏拍を意識する
     - 足を1, 3拍目で踏みながら、手を2, 4拍目で叩く練習をする。
     - これを歌に応用し、メロディを裏拍に乗せるように歌うことで、ジャズらしいグルーヴが生まれる。

この練習を続けることで、自然とスウィング・フィールが身につきます。

2-2. スキャットと即興の基本

ジャズの醍醐味のひとつに、スキャット(Scat) という即興的な歌唱スタイルがあります。
スキャットとは、歌詞を使わずに「ダバダ」「ドゥビドゥバ」などの音で即興的にメロディを作ることです。

エラ・フィッツジェラルドやルイ・アームストロングがスキャットの代表的なシンガーとして知られています。

スキャットをマスターするための練習法

  1. ジャズ・フレーズを真似する
     - 好きなジャズシンガーのスキャットを耳コピして、同じように歌ってみる。
     - 例えば、エラ・フィッツジェラルドの “How High the Moon” のスキャット部分を練習する。

  2. シンプルなスキャットから始める
     - まずは「ダバダ」「ドゥビドゥバ」などのシンプルな音で、ジャズのメロディをなぞる。
     - ゆっくりしたテンポの曲から試してみると良い。

  3. コードの音を意識する
     - ピアノやギターでコードを弾きながら、そのコードに合うスキャットを試す。
     - 例えば、Cコードの時に「ドミソ」の音を使ってスキャットすると、自然なハーモニーが生まれる。

スキャットを練習すると、即興力が向上し、歌の自由度が増します。

2-3. リズムとフレージングを磨く方法

ジャズの歌い方で重要なのが**フレージング(歌い回し)**です。
同じメロディでも、リズムを変えたり、音を伸ばしたり、タイミングをずらすことで、よりジャズらしい表現になります。

フレージングを磨く練習法

  1. ジャズの名曲を何度も聴いて真似する
     - エラ・フィッツジェラルドやビリー・ホリデイのフレージングを耳で覚え、真似してみる。
     - 特にビリー・ホリデイは、あえてリズムを後ろにずらして歌う独特のフレージングが特徴的。

  2. メロディのリズムを崩してみる
     - 普通に歌った後、意識的にメロディの入りを遅らせたり、早めたりして歌う。
     - 例えば “The Way You Look Tonight” を普通に歌った後、少しリズムをずらしてみる。

  3. 歌詞の語尾を変化させる
     - 例えば、「I love you」というフレーズを、「I loooove…you!」と語尾を長く伸ばして強調する。
     - 逆に、「I…love you!」と**「I」を長めにして後半を短くする**と、また違ったニュアンスが生まれる。

これらのテクニックを使うことで、単調にならず、ジャズらしいニュアンスを表現できます。

次回予告:表現力を高めるテクニック

ここまで、ジャズらしい歌い方の基本について解説しました。
次のセクションでは、さらに一歩進んで、表現力を高めるためのテクニックについて紹介します。

特に、ジャズ特有のニュアンス、感情表現、ステージパフォーマンスについて深掘りしていきます!