4. 実践的な練習方法と上達のコツ

ジャズ・ヴォーカルの基本を理解し、表現力を磨いたら、次は実践的な練習を通じてスキルを向上させましょう。
このセクションでは、発声の強化、効果的なレパートリーの増やし方、一流ジャズ・シンガーから学ぶポイントを詳しく解説します。

4-1. 発声とブレスコントロールの強化

ジャズを歌うためには、しなやかで安定した発声が欠かせません。
特に、柔らかさと力強さをコントロールする技術が重要です。

① ジャズに適した発声法を身につける

ジャズ・ヴォーカルの特徴として、リラックスした響きと滑らかな音のつながりがあります。
ポップスやクラシックとは異なり、力みすぎずに自然な声を出すことが大切です。

おすすめの発声練習

  • ハミング(鼻歌)練習
     → 「んー♪」と鼻腔を響かせることで、柔らかく温かみのある声を作る。
  • リップトリル(唇を震わせる発声)
     → 息の流れをスムーズにし、無駄な力を抜く効果がある。
  • 母音トレーニング(特に「Ah」「Oh」)
     → ジャズは母音の響きが重要なので、「Ah~」をリラックスした状態で出す練習をする。

これらの発声練習を行うことで、ジャズらしい「丸みのある声」を作ることができます。


② ブレスコントロールを鍛える

ジャズはロングトーン(長く伸ばす音)やブレスのタイミングの工夫が大切です。
特に、バラードでは安定した息の流れが必要になります。

おすすめのブレス練習

  1. ゆっくり息を吸って、少しずつ吐く
     → 8秒かけて息を吸い、8秒かけてゆっくり吐く。これを10回繰り返す。
  2. 歌詞のフレーズごとに息継ぎを意識する
     → 歌詞の意味を考えながら、「どこで息を吸うと表現が豊かになるか?」を試す。
  3. ジャズ特有の「ため息ブレス」を取り入れる
     → 例えば “The Man I Love” を歌うとき、「I sometimes wonder…(ため息のように)」と息を混ぜると、雰囲気が増す。

ブレスコントロールが上手になると、よりナチュラルなジャズ・ヴォーカルができるようになります。

4-2. レパートリーを増やす効果的な方法

ジャズ・シンガーとして成長するためには、多くのスタンダード・ナンバーをレパートリーにすることが不可欠です。
しかし、ただ曲数を増やすだけではなく、自分のスタイルに合った曲を選ぶことが大切です。

① まずは定番のスタンダード曲から

ジャズには、**よく演奏される定番曲(スタンダード・ナンバー)**があります。
以下のような曲を最初にマスターすると、ジャムセッションやライブでも役立ちます。

おすすめのスタンダード曲(女性向け)

曲名特徴
Summertime(サマータイム)ゆったりしたテンポで、感情表現がしやすい
Fly Me to the Moon(フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン)軽快なスウィングで、初心者にも歌いやすい
Autumn Leaves(枯葉)哀愁のあるメロディが魅力的
All of Me(オール・オブ・ミー)ジャズの基本的なフレージングが学べる
Misty(ミスティ)バラードの表現力を磨くのに最適

最初はゆっくりしたテンポの曲から始め、慣れてきたらスキャットやアップテンポの曲に挑戦すると良いでしょう。


② 楽譜やリードシートを活用する

ジャズの曲は、**リードシート(メロディとコードのみの簡単な楽譜)**を使って演奏されることが多いです。
リードシートを見ながら、メロディをアレンジしたり、即興でフレーズを変えてみると、よりジャズらしい歌唱になります。

おすすめのリードシート本

  • The Real Book(ジャズの定番曲が多数収録)
  • Jazz Standards for Vocalists(ヴォーカリスト向けのアレンジ集)

楽譜を参考にしつつ、CDやYouTubeの音源と一緒に練習すると、より実践的な感覚が身につきます。

4-3. 海外の一流ジャズ・シンガーから学ぶポイント

ジャズ・ヴォーカルを学ぶには、実際の名シンガーの歌い方を研究することが一番の近道です。
ここでは、代表的な女性ジャズ・シンガーと、それぞれの学ぶべきポイントを紹介します。

① エラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald)

  • 学ぶべきポイント:スキャットのテクニック、リズムの遊び方
  • おすすめ曲“Cheek to Cheek”, “How High the Moon”

② ビリー・ホリデイ(Billie Holiday)

  • 学ぶべきポイント:リリックの感情表現、フレージングの自由さ
  • おすすめ曲“Strange Fruit”, “The Man I Love”

③ サラ・ヴォーン(Sarah Vaughan)

  • 学ぶべきポイント:音域の広さ、豊かなビブラート
  • おすすめ曲“Misty”, “Lullaby of Birdland”

④ ダイアナ・クラール(Diana Krall)

  • 学ぶべきポイント:モダンなジャズ・ヴォーカルのスタイル、ピアノ弾き語り
  • おすすめ曲“The Look of Love”, “I’ve Got You Under My Skin”

これらのシンガーの歌い方を研究し、真似することから始めると、自分のジャズ・スタイルが見つかるはずです。